Blockstream四半期アップデート - 2025年第1四半期
- yutaro stacksats
- 4月3日
- 読了時間: 10分
更新日:4月13日

今回の最新レポートでは、2025年第1四半期におけるBlockstreamの主要なビジネス成果、エンジニアリングの進展、業界との関わりを振り返るとともに、2025年第2四半期に向けた戦略的優先事項についてもご紹介します。
2025年 第1四半期の主なハイライト
Blockstream資産運用ファンドの立ち上げ:
ヘッジファンド、ファミリーオフィス、その他機関投資家からの強い関心を集める、3つの新たな機関投資家向けビットコイン投資商品を発表。
Jade Plusをリリース:
これまでで最も高度なセルフカストディ・ソリューションを発表。セキュリティとユーザー体験の強化に加え、オプションのJadeLinkアクセサリによるエアギャップ署名も可能に。
東京オフィス開設:
Fulgur VenturesおよびDiamond Handsと提携し、日本市場での機関投資家との連携強化とレイヤー2開発を推進。
エンジニアリング面での大きな進展:
Core Lightning(CLN)v25.02、Elements 23.2.5、ELIP 200を含む、Core Lightning、Greenlight、Liquidの各プロジェクトで重要なアップデートを実施。
グローバルな業界イベントへの参加:
iConnections、Plan B(エルサルバドル)、Hong Kong Consensus、Bitcoin Investor Week、ロンドンでの機関投資家向けイベントなど、業界の第一線イベントに経営陣が登壇。
開発者・コミュニティ支援活動:
エルサルバドルでLiquid開発者向けブートキャンプを開催。ルガーノのR&Dハブでは、新たなレイヤー2プロジェクト支援のためCHF 10,000の助成金プログラムを開始。
メディア掲載:
主要な一般メディアおよび暗号資産メディアで特集・インタビュー掲載。ビットコインと伝統的金融の交差点におけるBlockstreamの存在感が拡大。
Blockstream Finance:機関投資家向けの革新
2025年第1四半期、元ヘッジファンドマネージャーで新たにCIOに就任したショーン・ビル(Sean Bill)のリーダーシップのもと、Blockstream Asset Management(BAM)は、機関投資家によるビットコイン投資の最大級の導線となる3本のビットコイン・ネイティブ投資ファンドを発表しました。
2025年第2四半期のローンチを予定しているこれら3つの革新的な金融商品――インカムファンド、USD利回りファンド、アルファファンド――は、すでにヘッジファンドやファミリーオフィス、資産運用会社から強い関心を集めており、今年最大級の機関向けビットコイン投資プロダクトになると見込まれています。
BAMのアプローチは、いわゆる「ビットコイン・フライホイール(好循環)」を加速させることを目指し、ビットコインの採用拡大、流動性向上、エコシステムの成長を促進します。今回の発表は、グローバルメディアでも広く報じられ、ビットコインと伝統的な資本市場をつなぐ存在としてのBlockstreamの影響力の高まりを強調する内容となりました。
今後もBAMは、規制対応済みで安全かつ機関投資家レベルのビットコイン投資商品への需要拡大に応えるべく、ビットコインとトラディショナル・ファイナンスを橋渡しする革新的な手段の開発に注力していきます。
Core Lightning:ライトニングの機能をさらに拡張
2025年第1四半期には、Core Lightning(CLN)v25.02の新バージョンがリリースされました。このバージョンでは、68日間で21名のコントリビューターによる242件のコミットが反映されています。
今回のメンテナンスリリースでは、以下のような改善が加えられ、ライトニングネットワークの信頼性と機能性が向上しました:
重要なバグ修正により、より高い安定性を実現
静的チャネルバックアップにshachainとピアのベースポイントを追加し、復元機能を強化
ブラックリスト化されたルーンの復元により、チャネル管理の柔軟性が向上
オニオンメッセージ処理の最適化により、ネットワーク全体のパフォーマンスを改善
さらに、BOLT12の正式サポートも間近に迫っており、再利用可能かつプライバシー保護されたライトニング請求書の導入が進んでいます。これは新たに提案されたBIP353のDNS支払い指示フィールドによって実現される予定です。
これらのアップデートにより、Core Lightningはスケーラブルかつ信頼性の高いビットコイン取引基盤としての地位をさらに強固なものとしています。
Greenlight:エンタープライズ向けライトニングのスケーリング
2025年第1四半期、Greenlightの主な取り組みは、新しいデータベースアーキテクチャへの移行でした。これにより、以下のような利点が得られます:
取引スループットの向上
ノード操作におけるレイテンシの低下
システムの稼働時間(アップタイム)の強化
移行完了後には、Webhookとの統合機能も導入され、たとえば以下のようなリアルタイムのクライアント連携が可能になります:
署名者(signer)の呼び出しによる取引承認
管理者UIのトリガー操作
BOLT12統合による再利用可能でプライベートな支払いの実現
また、CLN v24.11の本番環境での導入も間近に迫っており、これによりBOLT12を正式サポートする予定です。
並行して、Liquidネットワーク上でのライトニング決済(Lightning-on-Liquid)にも取り組んでおり、即時かつ機密性の高い決済が可能になります。これに加えて、支払い実行時の信頼性と速度の改善にも引き続き注力しています。
Blockstream Research:ビットコインのセキュリティとスケーラビリティを前進させる
Blockstream Research は、スケーラビリティ(拡張性)、セキュリティ、レイヤー2技術における最先端の研究を進めることで、ビットコインの未来を形作る上で重要な役割を果たし続けています。世界有数のビットコイン暗号学者である Andrew Poelstra の指揮のもと、チームは強固で安全、かつ理論的に洗練されたソリューションの開発に最前線で取り組んでいます。
今四半期は、過去最大となる15億ドル規模の仮想通貨取引所 Bybitハッキング を受けて、チームは「表現力の高いスマートコントラクトのリスク」という論考を発表しました。この論文では、ブロックチェーン上でのプログラマビリティ(柔軟なプログラム機能)とセキュリティのトレードオフについて深く掘り下げています。
柔軟性のあるスマートコントラクトには特定の用途で可能性がありますが、ビットコインは一貫して「分散性・セキュリティ・拡張性を損なわないこと」に重点を置いてきました。Blockstream Research による今回の研究は、過度に複雑なスマートコントラクト環境がもたらすリスクを、タイムリーかつ的確に指摘しており、ビットコインの「保守的でセキュリティ重視の設計思想」を改めて裏付ける内容となっています。これは、特に機関投資家にとって重要な視点です。
ビットコインの普及が進む中で、Blockstream Research は今後も「責任あるイノベーション」を推進し、ビットコインを無用なリスクなくスケールさせていくための議論に貢献していきます。
JadeとGreen:ビットコインのセルフカストディをさらに強化
こちらの記事で発表されたように、2025年Q1に登場した新型ハードウェアウォレット Jade Plus は、ビットコインのハードウェアセキュリティにおける大きな前進を示しました。2021年に初登場したJadeシリーズの最新モデルであるJade Plusには、画面の大型化、カメラの高性能化、そしてオプションアクセサリ「JadeLink」によるエアギャップ型ファームウェアアップデート機能が搭載され、セキュリティを重視するビットコインユーザーにさらなる安心をもたらします。
Blockstreamのウォレットアプリ「Green」も大きく進化しました。新たに「ビットコイン購入機能」が追加され、200種類以上の通貨でアプリ内から直接セルフカストディ先にビットコインを購入できるようになりました。これにより、初心者でもスムーズにセルフカストディに移行できるようになり、Blockstreamのウォレット全体に一貫する「セルフカストディ優先」の方針がさらに強化されました。
さらに、「Green上のライトニング機能」は実験段階を経て、正式なベータ版に移行。第三者に資産を預けることなく、迅速かつ低コストなライトニング決済がより実用的な形で利用できるようになりつつあります。
Liquid:ビットコインの金融レイヤーを拡張する
Liquid Network は、2025年Q1も着実に採用を拡大しました。
Elements 23.2.5およびELIP 200 の導入により、「DiscountCT(ディスカウントCT)」と呼ばれるプロトコルアップグレードが実現。これにより、機密トランザクション(CT)の手数料が最大90%削減され、LBTCやUSDT-LiquidといったLiquid上の資産を使った取引が、企業や金融機関、一般ユーザーにとってさらに利用しやすくなりました。さらに、3月にリリースされたELIP 201(DustCT)では、ダスト中継手数料の初期設定が引き下げられ、1サトシからの少額送金も可能に。LWK・GDK・Elements Coreでは新たに21サトシをデフォルト値として設定予定です。
また、Blockstreamは新しいExplorer API をリリースし、資産追跡やネットワークの透明性を向上。開発者向けにはLWK(Liquid Wallet Kit)v0.9.0 を提供開始し、CT割引の初期適用、手動コイン選択、AMP2の実験的サポートなど、Liquidウォレット実装の柔軟性と機能性が向上しました。
2024年10月のtestnet実装を経て、Simplicity の本格展開も目前。現在、Liquid Federationのファンクショナリーノード運営者と連携し、本番ネットワークへのSimplicity対応を進めており、2025年第2四半期末までにメインネットでの実装完了を目指しています。Simplicityにより、Liquidは高度かつ検証可能なスクリプティング機能を備え、セキュリティ重視のビットコイン哲学を維持しながら、さらに高い柔軟性を獲得する予定です。
Liquidの2025年Q1末時点でのロックされた総価値(TVL)は25億米ドルを突破しており、ビットコインを基盤としたトークン化・決済インフラを模索する金融機関・企業による採用が着実に進んでいることが示されています。支払い手段としてだけでなく、資本市場向けの広範なユースケースに対応できるLiquidは、ビットコインを未来の金融インフラへと押し上げるBlockstreamのビジョンにおいて、不可欠な構成要素であり続けています。
戦略的連携とビジネス開発
2025年Q1を通じて、Blockstreamはグローバル展開を加速させ、重要なパートナーシップをさらに強化しました。大きな節目となったのは、日本のビットコインアドバイザリー企業Diamond HandsおよびFulgur Venturesとの提携による、東京オフィスの開設です。この拠点は、日本およびアジア太平洋地域における機関投資家との関係強化、ローカル開発者コミュニティの支援、ビットコイン導入の加速を目的としています。

Blockstreamは国際会議への参加も継続しており、CEOのアダム・バックとCIOのショーン・ビルは、以下のような主要イベントで登壇しました:
iConnections Miami
Plan B El Salvador
Consensus Hong Kong
Cantor Global Technology Conference
Bitcoin Investor Week
ロンドンでの複数の金融機関向けイベント
特に印象的だったのは、Consensus Hong KongでのOKXプレジデントのホン・ファン氏との「グローバルビットコイン決済の進化」に関する対談、そしてiConnections MiamiでのGalaxy DigitalやAnchorage Digitalとのパネルセッションです。ここではデジタル資産の機関導入が議論されました。
こうした国際的なフォーラムは、ビットコインを未来の金融インフラと位置づけるグローバルな議論をリードするうえで、また、アセットマネージャー、ファミリーオフィス、機関投資家との対話の場として、Blockstreamにとって非常に貴重な機会となりました。
また、教育と草の根レベルでのイノベーション支援も強化しています。El SalvadorとアルゼンチンではLiquid開発者向けブートキャンプを実施し、スイス・ルガーノにあるR&D拠点では、新たなレイヤー2プロジェクトを支援するためのCHF 10,000(約160万円)の助成金プログラムを立ち上げました。
これらの取り組みは、世界中に強固なビットコインエコシステムを構築するというBlockstreamの継続的なコミットメントを示すものです。
メディア掲載のハイライト
2025年Q1、Blockstreamの各種成果は、暗号資産系メディアだけでなく伝統的な金融メディアからも幅広く注目されました。主な掲載内容は以下の通りです。

Blockstreamの東京オフィス開設とアジア進出についてのCoinDeskの報道
Jade Plusのローンチを伝える記事がBeInCryptoなど多数のメディアに掲載
Blockstream Asset Managementによる機関投資家向けビットコインファンドについて、Forbes、CoinDesk、Cointelegraphなどが報道。CIOのショーン・ビルがBloomberg CryptoやRoxom TVのインタビューに登場
CEOアダム・バックのメディア出演も多数。Channel 4のドキュメンタリーSeeking Satoshiへの出演をはじめ、CNBC Asia、CoinDesk、CoinDesk TVでのインタビュー、そしてPomp Podcastへのゲスト出演など、多方面で露出がありました。
今後の展望:2025年第2四半期の優先事項
Blockstreamは2025年第2四半期に向けて、ビットコインの金融インフラ拡張、レイヤー2のスケーラビリティ向上、そして機関投資家との関係強化に引き続き注力していきます。
今後数カ月間の主要な取り組みは以下の通りです:
Blockstream Finance:
ビットコインを基盤とした新たな投資商品の検討を進めるとともに、世界の金融市場において真に影響力を持つ人物たちと対話を続け、ビットコインの資産クラスとしての価値を広めていきます。
Core Lightning:
BOLT12の本番導入とネットワーク最適化の実施。
Greenlight:
エンタープライズ導入の拡大およびWebhook統合の展開。
Liquid:
Simplicityのメインネット実装の推進、トークン化資産発行の促進、Liquidエコシステムの継続的な育成。また、イタリアおよびブルガリアにて4月・5月に開かれる開発者向けブートキャンプも開催予定です。